令和5年10月15日  国立国会図書館長  吉永元信 様  公共図書館で働く視覚障害職員の会(なごや会)                          代表 松井 進 国立国会図書館における障害者サービスのさらなる充実を求める要望  貴館の視覚障害者等へのサービスに対する尽力に敬意を表します。  本会は2020年8月に「国立国会図書館の障害者サービスに関する要望」を提出し、貴館の障害者サービスの充実を求めてきました。その結果、国立国会図書館が所蔵する膨大なデジタルデータを視覚障害者等の読書障害者に利用可能な「みなサーチ」のベータ版公開や歴史的音源の活用、電子書籍のアクセシビリティーガイドラインの公開等、貴館のみならず全国の図書館の今後の障害者サービスの充実と発展に寄与するものと期待しています。  一方、図書館の蔵書の直接閲覧(対面朗読)や、録音図書の制作体制の構築等、読書権保障に関する他の要望項目については、残念ながら改善が見られず、今回改めて要望書を提出することといたしました。  令和元年6月に「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」が成立、施行されました。同法の理念を実現するための貴館の役割は大きく、これまで以上に障害者サービスの充実に努めていただく必要があると考えます。  そこで、本会のこれまでの要望の中で、図書館の閲覧の保障という、最も基本的なサービスであり、障害者の読書権を保障するためには最も重要でありながら、未だ実現されていない対面朗読サービスや、資料製作の充実等について、今後是非改善をお願いしたい以下の項目を要望いたします。 1.国立国会図書館における音訳者等の対面朗読・資料製作のための人材の確保について 国立国会図書館独自に、音訳者等対面朗読や資料製作のための人材を募集または養成し、館内での対面朗読サービスや学術文献録音DAISY資料製作に携わる人材登録の制度を確立してください。 2.対面朗読サービスの実施について (1)現在、国立国会図書館3館では図書館が音訳者を準備して行う対面朗読は実施していません。利用者が音訳者を同伴した場合の場所の提供や、音声拡大読書器、視覚障害者用閲覧用端末などの設置だけでは視覚障害者等に対する図書館利用の機会均等を保障するものではありません。そこで、図書館が自ら主体的に行う対面朗読サービスを実施し、貴館を単独で利用する視覚障害者等に対して利用の機会均等を保障してください。 (2)国立国会図書館の対面朗読(閲覧サービス)では単純に資料を音訳することにとどまらず、利用者の高度な調査・研究への対応が求められます。そのために、高度な音訳と処理技術を持つ音訳者の確保に加え、館内のさまざまな専門分野を担当する職員とも連携して対応できる体制を整備してください。 (3)来館が困難な視覚障害者等に対し「Zoomミーティング」等のアクセシブルなウエブミーティングシステムを用いて、国会図書館の蔵書を活用した高度な調査研究を行うための対面朗読やレファレンスサービスを実施できるよう体制整備を行ってください。 3.学術文献録音DAISY資料の製作期間について  国立国会図書館の学術文献録音DAISY資料については完成までに長期間を要するということが大きな課題です。これは年度契約上の期間の問題や委託機関が限定されているなどの問題によるものと理解しています。そこで、業者への発注の時期を柔軟に行ったり、委託機関を増やすなどの改善を行うとともに、音訳者を確保し自館製作ができる体制を整備し、製作期間を短縮するための対策を取ってください。 4.諸外国で制作されている音声資料等について 国立国会図書館が窓口となり提供されている諸外国において製作された利用可能な資料について、図書館の求めに応じ言語別または主題別等の目録の提供を行ってください。