平成30年10月12日  国立国会図書館長    羽入佐和子 様  公共図書館で働く視覚障害職員の会(なごや会)                             代表 服部 敦司 国立国会図書館の視覚障害職員採用に関する要望  貴館の視覚障害者等へのサービスに対する尽力に敬意を表します。   本会は1989年9月、全国の公共図書館で働く視覚障害者が10人に達したのを機に名古屋市で発足しました。本年10月現在、東は埼玉県から西は兵庫県に至る17自治体の公共図書館に20名が正規職員として働いています。会員相互の親睦と情報交換、専門家集団としての出版物の刊行などの他、一人でも多くの視覚障害者が働く機会を得るための活動が本会の目的です。  さて、本年7月より各省庁の障害者雇用水増し問題が大きな社会問題となる中、8月28日の各誌・テレビなどの報道で国立国会図書館も障害者の雇用率を水増ししていたことが明らかになりました。この間、雇用率を満たしていると公言してきた国立国会図書館までがこのような水増しをしていたことには強い憤りを覚えます。  2016年8月に本会が提出した「国立国会図書館の障害者サービスに関する要望」を始め、これまでにも本会を含め、多くの視覚障害関係団体が国立国会図書館に対して、視覚障害者を職員として採用し、当事者を含めた体制でサービスを実施することを要望してきました。  1994年には「国立国会図書館の職員採用における点字・拡大文字等による試験の実施等に関する請願」が参議院で付帯決議となり、これを受け、同年には2名の視覚障害者が国立国会図書館に点字受験を求めて願書を提出しましたが、受験は認められませんでした。さらに、1998年・1999年にも視覚障害者が点字受験を求めて願書を提出しましたが、「視覚障害者が自力で働けるだけの技術的な条件は整っていない」と言う理由で願書も受理されず、受験拒否が繰り返されました。  近年、視覚障害者の職場環境も向上し、現在では20名の視覚障害者が公共図書館で正職員として勤務し、その多くが自館の障害者サービスの中心的な立場で活躍しています。  国立国会図書館は全国の図書館への障害者サービスの支援・協力、学術文献録音図書の製作、視覚障害者等用データ送信サービス、障害者担当職員向け講座の企画立案、来館した視覚障害者へのICT支援など当事者が関わることのできる多くの業務を実施しています。また「視覚障害者が自力で働けるだけの技術的な条件」も、これまでの40年余の期間に30名を超える視覚障害者が全国の公共図書館で働き、実績を積み重ねてきていることからもわかる通り、すでに受験や採用を拒否する理由には成りえません。  障害者権利条約の下、わが国でも障害者差別解消法及び改正障害者雇用促進法などが施行され、社会全体で差別の解消や障害者の機会均等の向上をめざす気運が高まるなか、貴館におかれましても、今回の雇用率問題を特に重く受け止め、早急に対策をとることを求めるものです。  以上のことから、貴館が今年度中に実施を検討している障害者採用試験に視覚障害者の別枠採用試験を実施し、点字及び音声読み上げソフトの入ったパソコンによる試験を実施することを強く要望いたします。                     記  1. 国立国会図書館の採用試験に点字受験、音声パソコンによる受験を認め、視覚障害者を職員として雇用し、当事者の立場でサービスを実施してください。 2. 障害者採用試験では視覚障害者の別枠採用試験を実施し、点字の読み書きや音声パソコンのスキルなど仕事に必要な技術を採用試験の内容に含めてください。 3. 館内の施設に視覚障害者が働きやすい環境の整備をしてください。 4. 視覚障害者が雇用されたときに、能力を十分に発揮できるように必要な音声読み上げソフト、点字ディスプレイなどを速やかに配備するとともに、職場内で業務遂行上必要な配慮を検討し、実施してください。 5. 未達成15名分の障害者雇用は障害者の能力、発揮できる仕事を勘案し、計画的に行い、3年をめどに実現する方向で採用計画を示してください。  この件に関して文書にて回答をお願いするとともに公共図書館で働く視覚障害職員の会(なごや会)との話し合いの場を設けていただくことを要望いたします。 以上 (連絡先) 公共図書館で働く視覚障害職員の会(なごや会) 西部支部長 杉田正幸