令和2年 8月3日  国立国会図書館長   吉永 元信 様  公共図書館で働く視覚障害職員の会(なごや会)                          代表 服部 敦司 国立国会図書館の障害者サービスに関する要望  貴館の視覚障害者等へのサービスに対する尽力に敬意を表します。  本会は2015年8月に「国立国会図書館の障害者サービスに関する要望」を提出し、貴館の障害者サービスの充実を求めてきました。その結果、2020年4月に本会がもっとも重視してきた視覚障害職員の採用が実現したことは、本会にとっての大きな成果であるとともに、貴館の今後のサービスの充実と発展に繋がるものと期待しています。一方、他の要望項目については、残念ながら、改善が見られず、今回改めて、要望書を提出することといたしました。  昨年の6月に視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法)が成立、施行されました。同法の理念を実現するための貴館の役割は大きく、これまで以上に障害者サービスの充実に努めていただく必要があると考えます。また、本年4月に募集された「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画(案)」に対するパブリックコメントにおいて、貴館への意見も多く寄せられました。ただ、残念ながら、そうした意見に対しても前向きな回答は見られず、落胆せざるを得ませんでした。そこで、本会のこれまでの要望に加え、上のパブリックコメントにおける貴館への意見とその回答も踏まえ、以下の項目を要望いたします。 記 1. 国立国会図書館における音訳者等、資料製作のための人材の確保について  国立国会図書館独自に音訳者等、資料製作のための人材を募集、または養成し、館内での対面朗読サービスや学術文献録音DAISY資料製作に携わる人材登録の制度を確立してください。 2. 対面朗読サービスの実施について (1)現在、国立国会図書館3館では図書館が音訳者を準備して行う対面朗読は実施していません。利用者が音訳者を同伴した場合の場所の提供や、音声拡大読書器、視覚障害者用閲覧用端末などの設置だけでは視覚障害者等に対する図書館利用の機会均等を保証するものではありません。そこで、図書館が自ら主体的に行う対面朗読サービスを実施し、貴館を単独で利用する視覚障害者等に対して利用の機会均等を保証してください。 (2)国立国会図書館の対面朗読(閲覧サービス)では単純に資料を音訳することにとどまらず、利用者の高度な調査・研究への対応が求められます。そのために、高度な音訳と処理技術を持つ音訳者の確保に加え、館内のさまざまな専門分野を担当する職員とも連携して対応できる体制を整備してください。 (3)来館が困難な視覚障害者等に対し「Zoomミーティング」や「Cisco Webex Meetings」等のアクセシブルなウエブミーティングシステムを用いて、国会図書館の蔵書を活用した高度な調査研究を行うための対面朗読やレファレンスサービスを実施できるよう体制整備を行ってください。 3. 学術文献録音DAISY資料の製作期間について  国立国会図書館の学術文献録音DAISY資料については完成までに長期間を要するということが大きな課題です。これは年度契約上の期間の問題や委託機関が限定されているなどの問題によるものと理解しています。そこで、業者への発注の時期を柔軟に行ったり、委託機関を増やすなどの改善を行うとともに、音訳者を確保し自館製作ができる体制を整備し、製作期間を短縮するための対策を取ってください。 4. 学術文献図書の資料形態の種類の拡充について  学術文献図書について、視覚障害者等の間でもっとも利用されている録音資料(音声DAISY)のタイトル数の充実に努めるとともに、テキストDAISY、マルチメディアDAISY、 Epub、テキストデータ等でも製作依頼できるようにしてください。 5. 国立国会図書館デジタルコレクションのアクセシビリティについて  国立国会図書館デジタルコレクションのアクセシビリティを確保し、視覚障害者等が閲覧できるようにしてください。 6. 国立国会図書館のホームページのアクセシビリティの改善について  国立国会図書館のホームページを音声・点字・拡大ユーザーが快適に使えるようアクセシビリティの改善をしてください。 7. 視覚障害者等用データ送信サービスの専用ページの設置について  視覚障害者等用データ送信サービスのコンテンツのみを検索可能な簡易検索ページを作成し、スクリーンリーダーや音声ブラウザからもストリーミングやダウンロードが容易にできるようにしてください。 この件に関して文書にて回答をお願いするとともに公共図書館で働く視覚障害職員の会(なごや会)との話し合いの場を設けていただくことを要望いたします。 以上